北洲ハウジング60周年記念

「あたたかい家」を科学する ― その①“断熱”の本当の価値

2016年12月19日

雪だるま

「北洲の家はあったかい―。」
今も昔も、最も多くいただくお褒めの言葉の一つです。

「あたたかい家」には「断熱」「気密」「換気」の3つの条件が欠かせません。 このうち、今回は「断熱」に焦点を当てて、掘り下げてみます。

断熱の本当の価値とは?

断熱の目的・効果には、次の3つがあります。

①表面の結露防止
②省エネ(光熱費の削減)
③快適性の向上

建物を覆う断熱材の厚さがポイントになりますが、①の「表面結露防止」は、2~3㎝で解決できます。
②の「省エネ」は、国が設定する基準をベースにすると、10㎝程度で達成します。③の「快適性の向上」は、15~30㎝程度で達成します。

もちろん、人が暮らす以上、③を重視すべきですが、③を目的にすると、必然的に①②ともに達成することはお分かりいただけると思います。この意味でいえば、「表面結露防止」と「省エネ」は、おまけのようなものです。

下のイラストは、左が低断熱、右が高断熱の家をあらわしています。どちらの家も室温は同じ20℃ですが、その家に住む人が実際に感じる温度である「体感温度」に違いがあり、左の家の人は寒さに震えています。
「熱を断つ」と書く断熱が、イラストの左の家は適切でないため、せっかくの暖房の熱は外に逃げ、さらに外の冷気が室内に忍び込んでいるのです。

適切に断熱された住宅

断熱性が低いと、床・壁・天井という外気に接している室内側の「表面温度」が下がります。これが寒いと感じる理由です。冬、窓ガラスに近づくとヒヤッとするあの感覚です。

寒いと感じると、当然、暖房の温度をさらに上げようとします。すると、光熱費もかさんでいきます。光熱費がかさんでくると、今度は節約行動にうつります。つまり、室内がなかなか暖まらず、光熱費も気になるので、靴下を履いたり厚着をしてガマンをします。あるいは家族みんなで一箇所にかたまってその部屋だけを暖めようとします。

このこと自体は合理的で良いのですが、今度は部屋によって大きな温度差が生まれてしまいます。リビングは暖かいけれど、廊下はキンキン、というパターンです。
これは、不快になるだけでなく、温度差に体がたえられず心筋梗塞などの心疾患を引き起こす「ヒートショック」の原因となります。

下のグラフでわかるとおり、入浴中の心疾患は冬場に突出します。暖かいお風呂場と、寒い脱衣場の温度差が体に悪さをするためと考えられます。

入浴中の心肺停止状態発生件数

「省エネ」つまり光熱費の削減は、その効果が数値で見えるだけにわかりやすく、説得力があります。そのため、我々住宅メーカーも、断熱イコール省エネ、節約!という価値だけに焦点を当てる傾向もあります。
しかし、断熱の本当の価値は、「快適性の向上」、つまり人の健康、そして命を守ることにあるということを見失わないようにしていきたいものです。

伊藤 裕章

伊藤 裕章
設計部 副部長 一級建築士
設計品質のマネジメントを担うとともに、自らもプランナーとして数多くの物件を手がける。北洲スタッフへの社内技術研修も実施。趣味は釣り。