第五回 アルヴァ・アアルト自邸

最終更新日:2020年09月23日

北欧フィンランド、ヘルシンキで暮らしている大村裕子です。
第五回目はフィンランドを代表する建築家、アルヴァ・アアルトの自邸を紹介します。

大村裕子

大村おおむら 裕子ゆうこ

Auer& Sandås architects
PROFILE ▼

2013年よりフィンランド、ヘルシンキ在住。一級建築士。1996年北海道大学工学部建築工学科卒業(建築環境学講座)。北欧輸入住宅会社にて16年設計に携わる。主に北海道、千葉、東京にて202邸の注文住宅、別荘、店舗等を設計。

その後スウェーデン、フィンランドの設計事務所にて住宅を設計。フィンランドの北欧建築視察専門の旅行会社を経て、現在はフィンランドの設計事務所 Auer& Sandås architects に在籍。

アルヴァ・アアルト自邸とは

アルヴァ・アアルトは世界に知られるフィンランドを代表する建築家で、1898年に生まれ1976年に亡くなるまでフィンランド中に多くの作品を残しました。アルヴァ・アアルト自邸は、1936年に完成、アアルトが38歳から生涯を過ごした家です。ヘルシンキ中心部からバスで15分ほどのムンッキニエミという閑静な住宅街にあります。

 

アルヴァ・アアルトの最初の妻アイノは若くして亡くなり、その後エリッサと結婚しました。アイノ、エリッサとも建築家でアルヴァ・アアルトと一緒に働き、またこの家で生活していました。男の子と女の子の2人の子供がいました。

 

また当初ここは自宅兼アトリエでもありました。1950年代にさらに所員が増え、徒歩で10分ほどの別の場所にアトリエ専用の建物が建てられました。
現在はアルヴァ・アアルト自邸、アトリエはそれぞれミュージアムとして一般に公開されていて、見学することができます。

 

 

アトリエ

 

ここがアトリエです。天井が高く、2階のスペースは建築模型の作業場として使われました。ここから多くの作品が生まれました。

 

 

ここがアアルトのデスクです。両面に窓がありよい景色を見ながら設計していたのでしょう。

 

 

 

リビングルーム

 

アトリエとリビングルームは大きな引き戸で仕切られています。引き戸の下にはベンチがあります。実はこれは日本の影響なのです。日本人にとっては引き戸は普通ですが、フィンランドでは引き戸は一般的ではありません。
アルヴァ・アアルトは日本の建築に興味を持ち、フィンランド在住の日本大使と交流があったそうです。また窓のすだれも日本の影響です。私は何度かこの自邸を見に来たことがありますが、初めて来たときにすでに親しみを感じました。これらも理由かと思います。窓枠や家具などに木がふんだんに使われいて、温かみを感じます。

 

 

 

大きな窓は通常開けないため、このような換気用の小窓があります。現在のフィンランドの住宅でもよく使われています。

 

 

2階のプライベートスペース

二階の主寝室のウォークインクローゼット、廊下、洗面所には天窓があります。アルヴァ・アアルトの作品は天窓が多く使われているのが特徴なのですが、自邸でも同じように使われています。フィンランドは緯度が高いため、冬は暗くなる時間が多いです。ここに住んでいると冬に光を取り入れることは、とても重要だとつくづく感じます。日本でウォークインクローゼットに天窓があったら、服が日に焼けてしまいそうですけれど。

 

 

 

寝室にはエリッサがデザインした戸棚がありました。ガラスの引き出しで実用的でありながら美しいデザインです。

 

 

 

対照的な外観

 

道路側から見た外観です。ほとんど窓がなく閉じられた印象です。外壁には2種類の素材が使われています。白のレンガと茶色の木です。白のレンガ部分がアトリエ、リビングルームなどのパブリックスペース、茶色の木の部分が寝室などのプライベートスペースです。

 

 

 

庭側から見た外観です。道路側とは反対に窓が多く、庭に対して開かれています。アルヴァ・アアルトの作品では、このように道路側に閉じていて庭側に開かれているという特徴があります。

 

 

大きなスケールからヒューマンスケールまで

アルヴァ・アアルトは都市計画や公共建築といった大きなスケールの設計をしていますが、同時にドアのハンドル、家具などの小さなヒューマンスケール、人が使いやすい設計をしています。
アルヴァ・アアルト自邸で見られるヒューマンスケールを紹介します。

 

 

 

ドアハンドル。袖がひっかりにくくなっています。

 

 

 

 

パイミオ結核療養所/サナトリウムのために設計された洗面ボウルです。水の音をできるだけ少なくするよう工夫されています。同じ部屋の別の患者さんに配慮しています。

 

 

 

 

階段まわりは私のお気に入りの一つです。一見手すりに見えない、細い手すりが良いです。勾配はゆったりとしていて、上りやすくなっています。道路側にはほぼ窓がないのですが、階段には窓があり光を取り入れています。

 

 

 

 

ゲストルームのベッドは高めになっています。ゲストルームのベッドは階段の上にあり、階段を上がるときの天井の高さを充分にとれるように設計されています。

 

 

 

インタビュー アルヴァ・アアルト自邸

フィンランドの建築家、クラウディア・アウエル(Auer& Sandås architects 代表) にアルヴァ・アアルト自邸について話を聞きました。

 

―アルヴァ・アアルトは日本でもよく知られています。フィンランド人とってアルヴァ・アアルトはどんな存在なのでしょうか?

 

アウエル アアルトはフィンランド建築を象徴する存在です。彼はフィンランドの建築に影響を与えただけではなく、世界中の建築に重要なインパクトをもたらしています。彼は近代建築の巨匠の一人です。

彼と2人の妻は、機能主義建築に人間らしいタッチを加えました。近代建築の原則に自由な曲線を取り入れた設計、人間の体や必要性に基づいたディテールは新しい試みです。
また白いレンガやコンクリートと木を組み合わせる手法は、いわばアアルトのブランドと言えます。現在世界中に知られている「北欧スタイル」は、アアルトから始まりました。

 

 

―アルヴァ・アアルト自邸についてどう思いますか?

 

アウエル 私は個人的にこの家のスケールが大好きです。最近の建築はスケールが大きすぎることがよくあり、小さな空間や狭い空間が欠けています。
もちろん違う素材の使用や、ディテール、ランドスケープとの繋がりも、素晴らしいです。庭側からみた外観の建築の構成は、イタリアやギリシャといった地中海のランドスケープのようです。垂直の要素と屋上テラスと水平のラインの対比が見られます。
この家と庭のランドスケープは溶け合って、ヒューマンスケールで芸術的な存在になっているのです。

 

 

 

 

 

アルヴァ・アアルト自邸 公式サイト (英語)
https://www.alvaraalto.fi/en/architecture/the-aalto-house/