家と暮らしのお役立ちコラム

増え続ける「熱中症」の緊急搬送者数。熱中症対策の決め手は、まず「断熱」

住宅は一度建てたら簡単には壊せないもの。途中でリフォームもできますが、費用と手間がかかります。新築時に、快適性を”建築のチカラ”=8つの性能で叶えることが、いつまでも変わらない安心につながります。

今回はこの8つの性能を「断熱・気密・遮熱・蓄熱・空気質・換気・調湿・安全」に分けて、わかりやすくお話します。

「熱中症」は人体が高温の環境にさらされることで発汗が連続的におき、体内の水分量が減少することで、熱失神や熱痙攣などが症状化する健康障害。

ご存知のように、重症化すれば死に至ることもある夏の危険な健康リスクです。

今回は家庭でできる「熱中症」対策について考えていきましょう。

(総務省、厚労省の統計からに作成:2021年)

 

「睡眠時熱中症」の予防対策は、屋根の「断熱」が決め手。

 

夜になってもなかなか涼しくならない、二階の寝室。集合住宅の最上階。

日中の屋根の表面温度は、70℃を超えることも。

 

昼間の日射で熱くなった屋根からは、天井を通してジリジリと日射熱が入り込んできます。就寝中にエアコンをつけていても、放射で伝わる熱で寝室は危険な環境になり、就寝時熱中症を引き起こす事例も、年々増加傾向にあります。

(写真)高性能住宅モデルの、熱画像。屋根が真っ赤になっている。(室内気候研究所)

 

「睡眠時熱中症」対策は、屋根の「断熱」が決め手。

 

 

就寝時に熱中症を発症する「就寝時熱中症」の多発傾向が、最近注目されています。

 

 就寝時には水分補給が不十分になりがちで、高齢者の独居世帯では体調の不良を伝える手段もなく、周囲が気づいた時には重症化している、といった例が後を経ちません。

 

効果的な対策は、屋根から侵入してくる日射熱を効率よく抑えること。

 

屋根の断熱強化こそが、「就寝時熱中症」対策の決め手なのです。

(写真)屋根からの熱侵入を防止すれば、エアコンも効率的に作動する。(北洲ハウジング)

 

 

 

エアコンをつけていても、暑さを感じる「断熱性の低い住宅」

新省エネ基準で規定されている断熱基準と、夏の室内の「暑さ」について考えてみることにしましょう。日射による外壁の温度上昇を外気温に置き換えて(Sol Air Temperature)室内の体感温度を計算した結果を以下に示します。

 

エアコンの設定温度を25℃にして連続運転したとしても、4地域(南東北、甲信地方)の基準断熱レベル(U A=0.75)では、外気温度が27℃になると室内では「暑さ」を感じ始めることがわかります(晴天で日射がある時)。

 

一方、北洲ハウジングが標準で採用している断熱レベル(U A=0.37)では、外気温度が37℃になってもエアコンをつけていれば「暑さ」を感じることはありません。

 

住宅での熱中症リスクを効率的に抑制し、同時にエアコンの消費エネルギー量を防止するためには、「断熱」の強化という基本的な方法が最も効果的だと言えるでしょう。

図)エアコン使用時の室内の体感温度と、外気温度の関係。(室内気候研究所)

 

エアコンの設定は、リモートワークなら26℃。熱中症対策なら28℃が上限。

 

下の図は、人間の着衣量と活動量から至適温度を数値計算した結果です。

 

知的生産活動を効率的に行おうとすれば、室温の上限値は26℃以下にする必要があります。

また、発汗を抑えて「就寝時熱中症」を予防するためには、エアコンを28℃以下に設定して、朝までつけっぱなしにすることが必要です。

 

冷房が嫌い、冷房するとだるくなるという方は、設定室温をもう少し低くして、長袖の寝具を着たり、布団や寝具を厚目に調節したりすると、「睡眠の質」も向上するでしょう。

 

科学的知見を上手に利用して、夏の生活をエンジョイしたいものです。

(図)夏の指摘温度と着衣量、活動量の関係。(室内気候研究所)

 

 

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