【湿度と健康 2】「結露」が生じない室内環境をツクルために必要なことは?

最終更新日:2021年12月11日

住宅は一度建てたら簡単には壊せないもの。途中でリフォームもできますが、費用と手間がかかります。新築時に、快適性を”建築のチカラ”=8つの性能で叶えることが、いつまでも変わらない安心につながります。

今回はこの8つの性能を「断熱・気密・遮熱・蓄熱・空気質・換気・調湿・安全」に分けて、わかりやすくお話します。

石戸谷 裕二
室内気候研究所 主席研究員
工学博士

石戸谷いしどや 裕二ゆうじ

PROFILE ▼

2007年 北海道職業能力開発大学校教授に就任
2013年 室内気候研究所 主席研究員に就任
札幌ドームなど大空間の環境設計に多数参画

前回は冬場の湿度環境と健康リスクとの関係を、科学的な知見に基づいて考えてみました。

今回は、乾燥を防ぐために行う「加湿」によって生じる、窓や壁への「結露」を防止する方法について考えていくことにしましょう。

 

漆喰や珪藻土などの自然素材は、それ自体が空気中の水蒸気を吸収・放散することで、空気中の水蒸気量を調整する能力を持っています。工学的には「調湿性能」と呼ばれており、その評価法は日本工業規格 JISで定められています。

 

「調湿建材」の知識と性能評価、適切な使用によって「結露」を未然に予防するという考え方が注目されています。

 

(写真)水蒸気を吸収・放散してくれる素材に囲まれると、健康リスクも軽減できる。

 

 

高性能住宅でも指摘されている、冬場の「過乾燥」が危険なわけ。

冬場の寒さを解消するために「断熱」を強化した高性能住宅が普及しはじめました。

 

「断熱」は室温維持して「寒さ」を排除することが目的ですが、日射などの影響で日中の室温が過剰に上昇すると、相対的に空気の湿度が低下する原因ともなりますから注意が必要です。また壁や天井の仕上げ材料としてビニールクロスを使用した住宅では、前に述べた「調湿性能」は期待できませんので、乾燥した環境を助長することにもなりかねません。

 

下の図は、壁と天井にビニールクロスを使用した高性能住宅の温度と湿度を、半年間にわたって測定した結果を示しています。

 

最寒期となる1月から2月でも最低室温は20℃を維持しており、「寒さ」を感じることはありませんが、相対湿度は30%を下回り「健康リスク」が高まる状態になっていました。

 

 

 

加湿をすると窓に「結露」するという、厄介なイタチごっこ。

 

風邪の予防のために加湿をすると、ベランダの窓ガラスが水浸しになる。

 

健康管理のために湿度を調整しようとすると、窓や壁に「結露」が生じてしまうという厄介な経験をしたことはありませんか?

 

「結露」させずに室内の温度と湿度を快適範囲に調整する方法を考える時には、まず「結露」の発生原因を把握しておく必要がありそうです。

 

(写真)窓や壁の結露は、カビや細菌の温床となる可能性が高い。

 

 

結露発生の目安になる「露点温度」は、高性能住宅でも意外に高い!

 

下の図は、省エネルギー基準を参考に予測した断熱性能と露点温度との関係を示しています。窓ガラスの断熱性能は、各地域における「断熱性能基準」を参考にして計算しました。

 

室内の空気を22℃、50%の「快適範囲」に維持したとすると、結露が生じる露点温度は 14℃となります。

 

北海道などの寒冷地の気候を想定した比較的高性能な「断熱性能基準」を満足していたとしても、外気温度が氷点下になると窓の表面温度は露点に達し、ガラスの表面には結露が生じる可能性があることがわかります。

 

また東京など、比較的温暖と言われる地域では、外気温度が11℃でも窓ガラスに結露することが予想されます。

 

 

窓ガラスの断熱性能は、「結露」の発生条件を参考にして選択しましょう。

 

冬場の「過乾燥」から健康を守るためには、湿度管理が不可欠です。

 

一方で省エネルギー基準を満足するような「断熱性能」を持つ住宅でも、比較的高頻度で出現するような外気温であっても、窓面の結露が生じる可能性がありそうです。

 

窓ガラスの「断熱性能」は省エネ基準に準拠するだけでなく、窓面結露が発生する条件を加味して選択しなければならない、ということが言えそうです。

 

また、壁や天井の仕上げ材に「調湿性能」を持つ建材を採用することも有効です。
加湿の他、炊事や入浴などの生活行動によって生じる水蒸気を調節するために役立ちます。

冬場の健康管理を合理的に行うためにも、建材や構法、要求性能の選択が重要になることを忘れずに、住宅の計画や建設を進めていきたいものです。