【断熱と健康 1】冬の浴室には、「心肺停止」の健康リスクも!

最終更新日:2022年01月15日

住宅は一度建てたら簡単には壊せないもの。途中でリフォームもできますが、費用と手間がかかります。新築時に、快適性を”建築のチカラ”=8つの性能で叶えることが、いつまでも変わらない安心につながります。

この8つの性能を「断熱・気密・遮熱・蓄熱・空気質・換気・調湿・安全」に分けて、わかりやすくお話します。

 

 

石戸谷 裕二
室内気候研究所 主席研究員
工学博士

石戸谷いしどや 裕二ゆうじ

PROFILE ▼

2007年 北海道職業能力開発大学校教授に就任
2013年 室内気候研究所 主席研究員に就任
札幌ドームなど大空間の環境設計に多数参画

お風呂好きが多いことで知られる『入浴大国』日本。

 

その陰で毎年17,000人もの人が、「入浴中の心肺停止事故」の犠牲となっている*ことをご存知でしょうか?今回は世界的にも事故の頻度が高いことで知られる、日本のお風呂事情について考えてみることにしましょう。(*東京都健康長寿医療センター研究所の報告より)

 

(写真)窓周りの陰影で、住宅の断熱性能が分かる!(設計・施工:北洲ハウジング)

 

 

温暖な地域で「心肺停止」の事故リスクが高いという、不都合な事実。

 

下図は、心肺停止の状態で自宅から緊急搬送された件数を、都道府県別に示しています。

 

積雪寒冷地で冬季間には非常に厳しい「寒さ」に見舞われる北海道と比較してみると、九州地区を含む23都府県の比較的温暖な地域の「心肺停止搬送(C P A)」リスクが、北海道の2倍以上にも達していることがわかります。

 

「C P A発生件数」は冬季間に急増することを併せて考えてみると、住宅内にある「寒さ」とC P Aリスクの間には、密接な相関関係があることが予見できます。

 

寒い住宅は健康リスクを高めるだけでなく、搬送から「寝たきり」につながることも多いので、結果として「寒さ」は健康寿命を縮める可能性が高い、とも言えそうです。

 

 

 

「断熱」性能を高めることで、健康リスクは低減できる!

 

冬の到来とともに外気温度が低下し始めると、室温も低くなり「寒さ」を感じるようになってきます。特に「浴室」のような入浴時以外は使用されることが少ない空間(非居住室)では、暖房装置が設置されていないことも多く、居間よりも室温が低くなりがちです。

 

しっかりと「断熱」性能を強化した住宅では、居間と浴室との温度差が小さくなるばかりでなく、暖房装置で消費されるエネルギーも少なく済みますので、暖房を稼働することに躊躇うこともなくなり、室温維持が容易になると考えられます。

 

(イメージ)しっかりとした「断熱」が、住宅内の健康リスクを低減してくれる。

 

居間の温度維持が「心肺停止搬送」のリスクを低減してくれる。

 

下の図は、在宅中の居間の温度と「心肺停止搬送(C P A)」の関係を示しています。

 

居間の温度が20℃程度と比較的「健康室温」近くに設定されている北海道と比較すると、全国的に設定室温が低めの地域が多く、室温の低下に伴ってC P Aの発生リスクが上昇していることが実測調査の結果からも明らかになりました。

 

居間の設定室温は非居住室の室温とも関連性がありますから、居間が寒ければ浴室も寒いと考えても良いでしょう。

 

健康リスクと冬の室温は、密接に関係している事実を、忘れないようにしましょう。

 

 

冬の「健康」維持に必要なのは室温の維持。まずは「断熱」強化から。

 

大切な家族の健康を守るためには冬の室温を適切に保つ必要があり、そのためには住宅の基本性能である「断熱」を事前にしっかりと考えておくことが大切です。

モデルルーム見学や住宅の完成見学会に参加されるときには、窓周りの様子をしっかりと観察してみてください。

 

断熱性能が高い住宅では窓台の奥行きが深くなっているはずです。見えないところに設置された断熱材の厚さも、窓廻りのデザインを見れば一目瞭然なのです。

(写真)健康リスクの排除は「断熱」から。(設計・施工:北洲ハウジング)