【蓄熱#02】自然の恵みが享受できる、最新の潜熱「蓄熱」技術とは?

最終更新日:2022年03月01日

住宅は一度建てたら簡単には壊せないもの。途中でリフォームもできますが、費用と手間がかかります。新築時に、快適性を”建築のチカラ”=8つの性能で叶えることが、いつまでも変わらない安心につながります。

この8つの性能を「断熱・気密・遮熱・蓄熱・空気質・換気・調湿・安全」に分けて、わかりやすくお話します。

石戸谷 裕二
室内気候研究所 主席研究員
工学博士

石戸谷いしどや 裕二ゆうじ

PROFILE ▼

2007年 北海道職業能力開発大学校教授に就任
2013年 室内気候研究所 主席研究員に就任
札幌ドームなど大空間の環境設計に多数参画

冬の「日差し」を、暮らしに活かすために必要なものは?

 

燦々(さんさん)と降り注ぐ冬の日差しほど、人の心を癒してくれるものはありません。

 

欧州の省エネルギー先進諸国と比較すると緯度が低い地域にある日本は、冬の日差しに恵まれています。日本は、健康的な冬の暮らしに「日差し」を活かすことができる潜在的なポテンシャルに満ちた国だと考えられています。

 

ここでは、冬の健康・快適生活を支えてくれる「日差し」の利活用技術について考えていくことにしましょう。

 

(写真)冬の日差しを無駄にすることなく利用するなら、潜熱「蓄熱」技術を活かすこと。

 

「断熱」だけでは、「日差し」を利用することができない本当の理由!

 

 

ドイツを代表する都市フランクフルトの、クリスマス・シーズンの一日。

 

朝8時頃からぼんやりと明けた朝は、午後になると足早に暗闇へと引き戻されてしまいます。キリストの復活と冬至が時期を同じくしている理由は、昼間の長さ、ひいては太陽の運行と無関係ではないでしょう。

 

冬の「日差し」を期待することのできないアルプス以北の欧州地域では、「断熱」技術を高度化して「出(い)ずるを制する」建築を推進することが、合理的だったことも理解できます。

 

一方で、冬場でも太陽が燦々と降り注ぐ日本では、「断熱」強化だけでは健康的な環境を構築できないといった不都合な事実が、最近よく指摘されるようになってきました。

 

(写真)日差しを期待できない、ドイツの冬。

 

「断熱」強化だけでは解決できない、「過昇温(オーバーヒート)」という不都合な事実。

 

 

健康リスクを抑えるために導入が推進されてきた「高断熱」「高気密」技術ですが、これらを推し進める中で、新たな課題が散見されるようになってきました。

 

それは、冬場の「日射熱」取得による好ましくない室温の上昇。いわゆる「過昇温」です。

 

住宅には熱エネルギーを蓄積しておく「熱容量」という性能が自ずと備わっているのですが、「断熱」だけを闇雲(やみくも)に進めると相対的に「熱容量」が不足して、室温が過度に上昇する現象が顕在化するようになってきたのです。

 

冬の「過昇温」は相対湿度の低下を引き起こすことにもつながりますので、「断熱」の強化が健康リスクを再び増大することにも繋がりかねないという現実は本当に残念なことです。

 

 

 

 

最新の潜熱「蓄熱」技術を応用した内装建材の開発で実現した、健康なクラシ。

 

それでは室内の「熱容量」を適切に増加させるためには、どのような方法があるのでしょうか?近年の潜熱蓄熱技術の発達で可能になった、熱容量の付与技術を見てみましょう。

 

一見すると他の内装材と変わることのない天然素材の塗壁ですが、そこにはこれまで実現することができなかった「熱容量」を大きくできる最新技術が隠されているのです。

 

(写真)「エコナウォール」には、室温の変動を穏やかにしてくれる技術が隠されている。

 

 

内装材料に隠された、「健康住宅」づくりの秘訣とは?

 

下の図は、高性能住宅の冬の室内環境に関わる実測データです。

一般的な高性能住宅では昼間の日射熱取得によって室温が異常に高くなり、結果として相対湿度が低下する様子が見て取れます。いわゆる「過昇温」現象です。

 

「熱容量」を付与することなく断熱性能だけを強化した結果として、日射熱で室温が過度に上昇する住宅が増えており、健康上のリスクにもなり得ると考えられます。

 

一方で潜熱「蓄熱」建材を採用することで「熱容量」を大きくした「健康住宅」では、日射による過度な昇温が抑制されて、快適範囲に室内環境が維持できていることが分かります。

 

 

一年中快適で健康的な生活を送るためには敷地を十分に読み解き、周囲の気象条件にあった住宅を建設していかなければなりません。

 

自然の恵みである冬の「日差し」を十分に活かしたクラシを享受するためには、「断熱」と「蓄熱」のバランスが欠かせないということを、しっかりと理解しておく必要がありそうです。