設計開発者ブログ
耐震シミュレーションで実現する「見える安心」への新しい取り組み その1
近年、日本各地で大規模な地震が頻発し、住宅の耐震性に対する関心はかつてないほど高まっています。
しかし、その安全性はこれまで、専門的な「壁量計算」や「構造計算」といった書類上の数値でしか確認できませんでした。
建築基準法を満たす数値を見せられても、専門知識がなければ理解が難しく、お客様にとっては「本当にこの家は大丈夫なのか?」という漠然とした不安が残ることも少なくありませんでした。
北洲ハウジングではこの状況を変えるべく、2015年より標準採用を始めた繰り返しの地震に優れた効果を発揮する「サステナブル耐震」の取り組みの一環として、京都大学生存圏研究所の中川准教授により開発された木造住宅倒壊解析ソフトウェア「wallstat(ウォールスタット)」を活用した、新しい家づくりの取り組みを開始しました。
これにより、計算上の数値だけでなく、お客様の住宅が実際の地震波でどう揺れるのかを「見てわかる」アニメーションで再現し、真の「見える安心」を提供することが可能になりました。
耐震シミュレーションを開始するまでの経緯やこだわりを3回の記事にわたってご紹介します。
今回は以下内容の1~3までをご説明いたします。
目次
- これまでの耐震性確認の課題と限界
- wallstatが実現する「見える安心」の仕組み
- 地震波の選定理由と、3回検証する理由とは
- 独自基準:倒壊防止の先にある「住み続けられる家」
- 耐震性と快適性・デザイン性の両立
- 最高精度のシミュレーションを実現するための舞台裏とこだわり
- まとめと今後の展開
1. これまでの耐震性確認の課題と限界
従来の耐震性確認は、建築基準法に基づいた「壁量計算」や、より詳細な「許容応力度計算」が主流でした。
これらの計算は建物の安全性を担保する上で必要不可欠なものですが、計算だけでは把握しきれない部分があったのも事実です。
課題と限界
- ・建物の形状や地盤の特性、繰り返しの揺れなど、現実の地震で生じる様々な要因が複雑に絡み合うため、壁量計算や許容応力度計算だけでは実際の挙動まで完全には予測しきれない。
- ・専門的な書類や数値の羅列は専門家でなければ理解しづらく、お客様の不安を完全に無くすことができない。

2. wallstatが実現する「見える安心」の仕組み
北洲ハウジングでは、従来の「壁量計算」による基礎的な安全性の確保に加えて、wallstatによる「地震シミュレーション」を組み合わせることでこの課題を解決しています。
アプローチは以下の2ステップで行われます。
STEP1:壁量計算(基礎的な安全性確保)
品確法に基づき、建物に必要な壁の量や配置を綿密に計算し、構造としての基本的な安全性をしっかりと確保します。
STEP2:地震シミュレーション(現実の可視化)
お客様の実際の設計プランを3Dモデル化し、大地震の地震波を入力します。建物がどのように動くのかをアニメーションで視覚的に再現し、直感的にわかりやすくします。

3. 地震波の選定理由と、3回検証する理由とは
北洲ハウジングの地震シミュレーションでは、一般的な1回だけの検証にとどまらず、「東日本大震災の地震波2回」+「極稀地震1.5倍(耐震等級3が想定する地震波)1回」の計3回を連続して入力するという極めて厳しい検証を行っています。これには明確な理由が3つあります。
【検証している地震波の波形】
〇1回目 東日本大震災

〇2回目 東日本大震災(90度反転)

〇3回目 極稀地震1.5倍

① 建築エリアの現実的なリスク(海溝型地震)に備えるため
地震には陸のプレートで発生する「陸域の浅い地震(例:熊本地震)」と、海のプレートで発生する「海溝型地震(例:東日本大震災)」があります。
地震調査研究推進本部のデータによると、北洲ハウジングの対応エリア(岩手県・宮城県・福島県・栃木県・埼玉県)は、今後30年間に震度6弱以上の揺れに見舞われる確率が26%以上と非常に高くなっています。(「確率論的地震動予測地図2020年版」参照)
さらに分類すると、北洲ハウジングの対応エリアでは地震発生確率の高い活断層(Sランク)が少ないのに対し、最高ランク(Ⅲランク)の海溝が存在しており、海溝型地震の発生確率が極めて高いことが分かっています。(「2022年1月13日公表の地震調査研究推進本部の長期評価」参照)
そのため、北洲ハウジングではより発生確率の高い海溝型地震を想定し、東日本大震災の地震波を標準としてシミュレーションを行っています。
②地震波が伝わる方向の「不確実性」に対応するため
実際の地震が発生した際、建物に対してどの方向から力が伝わるかは予測できません。
そこでシミュレーションでは、1回目は「設定通り」の方向で入力し、2回目は「南北方向と東西方向を90度入れ替えて」再入力します。
これにより、どの方向から激しい揺れが襲ってきても住宅の安全性に問題がないかを徹底的に検証しています。


③本震と余震が連続する「補修が間に合わない期間」を考慮するため
過去の大地震のデータを見ると、熊本地震では6日間のうちに震度6強以上の揺れが3回、東日本大震災では3日間のうちに震度6強以上の揺れが1回でした。
このような6日や3日間で耐震改修工事は間に合いません。よって最初の大きな揺れ(本震)を耐え抜くだけでなく、その後に続く激しい揺れ(余震)が連続しても住み続けられる安全性を確認するため、連続3回の入力を標準としています。


今回は以下内容の1~3までをご紹介いたしました。
次回は4~5の内容をご紹介します。
- これまでの耐震性確認の課題と限界
- wallstatが実現する「見える安心」の仕組み
- なぜ「東日本大震災」の地震波を「3回」も入力するのか
- 独自基準:倒壊防止の先にある「住み続けられる家」
- 耐震性と快適性・デザイン性の両立
- 最高精度のシミュレーションを実現するための舞台裏とこだわり
- まとめと今後の展開
wallstat開発者の中川准教授との特別対談
